前回の記事でPODニーブレースの総合的なお話をさせて頂きましたが、
今回は上位モデルのPOD K8 3.0に絞って深掘りしたお話をさせて頂こうと思います。

タイトルにもありますが、このニーブレースは神が纏う装具と言えるものです。
PODニーブレースにはスタンダードモデルのFRP製フレームを使用したK4 2.0と
今回ご紹介するカーボン製フレームのK8 3.0があるわけですが、
重量や防御力に関しては絶対的な違いがあるわけではない
というのが前回のまとめでございます。
神の選択 K8 3.0
ようこそこちら側へ
先の前提を踏まえて、更に定価で
15.6万円の鍛造カーボン(Forged Carbon)定価9.1万円のK4 2.0を比較し、
それでも敢えてカーボンを選択するというのは、それはもう神の選択と言えます。

最高のフィット感を・最高のプロテクションを求めるという神々の皆様へ。
こちらが全てのニーブレースの頂点に立つK8 3.0でございます。
全体像・フレーム
素材

改めて全体を見てみましょう。
鍛造カーボン(Forged Carbon)というシートを層状に圧縮成形した
素材のフレームが独特の模様でインパクトのある見た目をしていますね。

一見上下ともにカーボンに見えますが、
旧モデルと異なりフルカーボンなのは上側のフレームです。
素材の強度としてはK4 2.0が採用するFRPよりもカーボンの方が強く、
肉厚を減らしても強度が担保出来るということで、各部が薄く成型されています。

こうしたフチの部分を見るとK8 3.0の方が薄い作りなのがわかりやすいですね。
薄いということは全体のシルエットもスリムになるということです。
近年のMXパンツは細身に作られているので
あまり大振りなニーブレースだと膝周りがキツいこともありますが、
K8 3.0にその心配は要りません。
カーボンは軽いのか

カーボン仕様と言われればさぞ軽いんだろうか・・・と期待したいところです。
しかし、実はK8 3.0のLサイズで実測750g。
K4 2.0のM/Lサイズで実測650gと、カーボンが軽いわけではありません。
これは後述する膝プロテクターの厚みが増したり、
ロワフレームの特殊な構造などのギミックが増したことによる影響です。
最適化されたサイズ

また、このフレームはサイズがS・M・L・XLと4種用意されています。
サイズ選びの際はこちらの数値を参考にしてみてくださいね。
詳しい測定方法はコチラの記事に
通常、このように細かくフレームからサイズを分けるのは
コストが掛かりますが、その分ライダーの脚に最適化出来るところがメリットです。

このお話はヘルメットにも言えることで、安価なヘルメットの場合、帽体サイズは1-2種類で
そこに内装の厚みでサイズ展開を増やす形を取っています。
ホームセンターの激安ヘルメットなどではフリーサイズというのもありますね。
帽体のサイズを絞ると、製造・管理コスト・在庫リスクが減らせる一方で、
フィット感や重量の最適化という面で言うと、どうしても不利になってしまいます。

アライヘルメット公式サイトより引用
これがARAIやSHOEI、BELLなどの高価なヘルメットになると
3種~それ以上の帽体サイズに分かれていたりします。
これならば、頭の小さなライダーが無用に大きな帽体のヘルメットを被る必要はありませんし、
その逆も然りです。ただし・・・コストは掛かります。
故に帽体サイズが細かなヘルメットは高価になりやすいんですね。
K8 3.0も同じ理屈で、各サイズ独立したラインナップになっているのは、
コストよりもサイズの最適化を重視しているということです。
流石はハイエンドモデルですね!
従来と発想を変えたロワフレーム
上下で異なるフレーム素材
前述の通り、上側のフレームは鍛造カーボンです。
しかし、ロワフレーム(下側のフレーム)はカーボンと
樹脂の複合素材を使用したハイブリッドなモノになっています。

従来のモデルではロワフレームまでフルカーボンでしたが
あえて今回のモデルでは柔軟性を優先する形を取りました。

一見するとフルカーボンで固い方がしっかり膝を守れるのでは?・・・と思いますよね。
僕もそう思います。なんなら従来メーカーもそう考えていました。
しかし・・・実際には少し違っていたようです。
固いフレームは当然ながら変形しにくいものですが、
一方で筋肉の収縮(特にふくらはぎ)に追従しきれず、
フィット感にはムラがありました。
締め付けがキツイ瞬間と緩い瞬間が混在しているわけですね。
そのため、締め付けの緩い瞬間に捻る・回旋する動きが加わると、
脚を支えきれず、ニーブレースの機能が弱まってしまうのです。
ここで一度、膝を壊すという事象がどのように起こるか考えてみましょう。
膝の壊しかた3選
膝の靭帯を損傷する際、衝撃の加わり方は大きく3パターンあります。
それぞれどういうものか見ていきましょう。
①過伸展
一つ目は過伸展。逆関節方向に足を曲げようとする力。通称で逆パカとも言います。

②横方向(外反・内反)の衝撃
二つ目は横方向(外反・内反)の衝撃。
関節の可動方向ではない力が加わるのでやはり膝は壊れます

③捻じれ方向(回旋)の衝撃
そして三つめが捻じれ方向(回旋)の衝撃。轍に引っかったり、
足首が引っかかって身体が投げ出されるなどの動きで良く見る動きですね。

捻り方向の衝撃に対応するには
従来の固いフレームの場合、①の過伸展や
②の横方向の衝撃には十分対応出来ていましたが、
捻じれ方向の衝撃にはまだ課題がありました。
前述の通り、脛の締め付けにムラがあるため
ニーブレースの中で脚が捻じれてしまう=空振りしてしまうわけです。
そのため、ロワフレームにはあえて柔軟性を持たせ、膝の曲げ伸ばしによる
筋肉の収縮にしっかりと追従し、
常に一定のフィット感をキープできるようになりました。
これにより、脚がニーブレースの中で空振りする現象を防ぐようになっています。
柔らかくしたことでフィット感が向上し、より膝を守れるようになったということなんですね。

ロワフレームの両サイドの黒い部分はFRPとカーボンのコンポジット素材になっています。
ここは剛性重視でほどほどに固め。
センターのグレーの部分はTPU(熱可塑性ポリウレタン)という
柔軟性に優れた良くしなる素材になっています。
ここがしなるように変形することで脚へのフィット感を常に最適に保ち、
しっかりと脚をホールドしてくれるということです。
柔らかいもう一つの理由
ロワフレームを柔らかくした理由はそれだけではありません。
改めて捻り方向の怪我を考えてみましょう。
膝が捻じれることで起こる怪我というのは色々なパターンがあれど、
概ね以下のプロセスであると考えられます。
-
足先が地面(轍など)に引っかかる
-
上半身・太ももは先に回転する
-
膝下は遅れて回転する、もしくは止まる
という時間差の捻じれで負荷が掛かり膝を壊す形になります。

これに対して有効なのは、ただ固いフレームで衝撃を跳ね返すよりも、
衝撃の伝達をゆっくりにすべきというのがK8 3.0の考えです。
この構造により、
-
回旋方向の衝撃を受ける↓
-
ロワフレームのTPU(グレーの柔らかい部分)が瞬間的にたわむことで衝撃を一部吸収・伝達スピードを鈍化させる。↓
-
残りの力はコンポジット素材(黒い固い部分)を通して分散、耐える
という形で脚を守ろうというのがK8 3.0のポイントです。
これまでのニーブレースが固いリジットフレームとすれば、
K8 3.0はサスペンションが付いた良くしなるフレームに進化したと
言えばよりわかりやすいかもしれませんね。
CEレベル2の膝プロテクター
関節を守るという機能におけるポイントはここまでのお話で
概ね説明しましたが、勿論打撃面での防御力も進化しています。


インパクトガードと呼ばれる膝のお皿を守る部分のプロテクターは
従来のモデルでは比較的薄いプラスチックのような仕様でした。
K8 3.0ではしっかりと厚みとクッション性のある仕様に進化しており、
膝を強打するような衝撃を受けても、しっかりとお皿を守ってくれそうです。
保護範囲も広くなっていて視覚的な安心感も良いですね。
関節部の進化
赤い人工腱

K8 3.0では関節部もリニューアルされました。
これまではカーボンとFRPフレーム、長らく共通の関節パーツを使用していましたが、
10数年振りの仕様変更で赤いリガメント=人工腱に変更されています。
明らかに幅が広くなった新しいリガメントは
動きのスムーズさで言えばこれまで通り。強度は向上しているとのことです。
正直、この点はメーカーの主張しかまだ根拠が無いので、
数年掛けて検証していきたいところですね。
従来モデルの場合、サンデーライダーで1-2年毎に交換が必要だったので、
今回の改良で交換サイクルが伸びると嬉しいところです。
ベルクロを廃したサイドパッド

関節部内側の、膝関節を掴む部分のパッドは
従来のベルクロ固定からカッチリとしたロック機能付きのモノに進化しました。
しっかり固定されているので、パッドがズレることや砂が付着して固定が甘くなることもなさそうです。
この部分のベルクロって徐々に固定が甘くなっていきがちですからね。
総合評価

以上、POD K83.0ニーブレースのポイントを解説でした。
10年以上、構造を抜本的に変えるような大きな変更は無かったPODですが、
ここに来て従来の思想を大きく転換した思い切ったモデルチェンジを行いました。
特にロワフレームの構造は、強さで守るという従来の手法から
強さとしなやかさで衝撃を逃がし・守るという形にアップデート。
関節のリガメントも新型へと代わり、評価はこれから実践で確認していくことになりますが
従来のPODシリーズは適切なメンテナンスを行えば、10年以上使えた事例もザラにある
抜群の物持ちだったので、耐久性の進化にも期待して見ていきたいと思います。
ダートバイクプラス各店では、
今回解説したK8 3.0を始め、色々なニーブレースの種類とサイズを
お試し頂けますし、膝を痛めたしくじり先生達(スタッフ)が
実体験と共に詳しくご説明させて頂きますので、是非お試し頂ければと思います。
オンラインストアでも実使用前であればご購入後の
サイズ交換も承っておりますので、こちらもお気軽にどうぞ。
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