ハイエンドモトクロスウェアの価値とは


モトクロスウェアのハイエンドモデル


DFGブランドからWORX=ワークスというハイエンドモデルのウェアが発表になりました。
昨年より馬場大貴選手や亮太選手に先行して着用テストして頂いていたものです。


先行して販売されていたSOLID=ソリッドというシリーズはエントリーモデルに位置し、
買いやすい価格や林道でも着用しやすい、敢えての地味さなどに重点を置いて開発されました。
必要十分な機能を持たせつつ、価格を抑えて気軽にオフロードギアを揃えて頂きたいということですね。

好評頂いているFLEXブーツや近々発売になるACEヘルメットも同じコンセプトとなっています。
どれも一般的な市場価格よりお求めやすい価格になっていると思います。

エントリーモデルとしては一通り揃ったところで、
いよいよハイエンドモデルも作っちゃおうというのが今回ご紹介するWORXジャージ&パンツです。

ジャージ&パンツの価格差ってなんなの

一口にエントリーモデルとかハイエンドモデルって言うけど、具体的にどう違うの?
結構価格が違うけど理由は?

よく頂くご質問です。
ニーシンガードとニーブレースの違いのように、
見た目からして大きく変わるものではないので一見わからないですよね。
まして、プロテクターでも無いのでハイエンドモデルが安全性で優位というわけでもありません。
ぶっちゃけエントリーモデルでも全然レースに出れるんです。

では何が違うのか?
それは動きやすさと涼しさです。どちらも身体のパフォーマンスを阻害しないことが大切です。
ストレッチ性能を高め、立体的な縫製で大きく身体を動かした際にも突っ張ることのないように。
そして身体にタイトフィットしてバタつきを抑え、汗を素早く吸収して熱を外に逃がす。

メーカーによって多少の違いはあれど、ハイエンドモデルの特徴はこんな感じですね。
レースにおいて決定的なパフォーマンスの差にはなりにくいものの、
あと一歩・あと少しの差を埋める手助けになるのがこうしたハイエンドモデルのウェアと言えるでしょう。
95を100にするようなイメージかな。
最善を尽くす、という意味では選んでおきたいところです。

現代のハイエンドモデルとは

どう違うのかはわかった。
では具体的な作りの差は・違いを詳しく説明してくれというオーダーにお答えしましょう。

手触りと厚み

まず、WORXウェアは手に取ったときの手触りが違います。
よくテロテロと表現されますが、非常に薄く、柔らかくサラっとした感触です。
わかりやすいMXパンツで比較してみましょう。

WORXパンツを無造作にテーブルに置くとペタンとなります。
この感触をテロテロと呼ぶのですが、ゴワ付きが皆無と言えばわかりやすいでしょうか。

SOLIDパンツを置くとこんな感じ。生地が固めというかパリッとしているので、
自然と綺麗に畳まれたような形になりますね。
お会計の際にレジで畳む際に凄く助かります(笑)
生地の厚みはそこそこ薄いので、WORXパンツほど軽くはないものの、ストレスは感じないレベルです。


10年ほど前のハイエンドウェアはもっともっと分厚くて固い感触のものが主流でした。
これは昔のFOXのハイエンドモデルである360(PLATINUM)パンツ。
2010年代にAMAで活躍していたライアン・ダンジーが着用していたお宝です。
まさにトップライダーの為のウェアでしたが、今の目で見るととても重く、厚みもあってゴワゴワしています。
縫製パターンも今よりとても複雑になっていて、膝のシャーリング(蛇腹)などが目立ちますね。
当時は今のようなストレッチ性のある生地が普及していなかったので、こうした加工で動きやすさを確保していたのです。

↑の画像は、無造作にテーブルに置いた図ですが、
生地が固いので自然と膨らんでいるのがおかわり頂けるでしょうか。(ペタンとしない)

この頃のハイエンドモデルはガレ場で派手に転んでも簡単に破れることはありません。
昔は頑丈さが一つのセールスポイントだったのですね。
現在の360パンツも耐久性は優れていますが、ここまで極端な作りではありません。

今これを着れるか?と言うと正直しんどいかな・・・

縫製と生地のストレッチ性


WORXウェアは全体的に通気性とストレッチ性が強いものを使用しています。
特に前部と後部を繋ぐ脇下の生地は特別良く伸びるので、タイトに着用しても突っ張るところがありません。
↑画像は脇下の生地を引っ張ってみた図なのですが、ロゴがびよーんってなってるのがわかるでしょうか。

ストレッチ性・通気性・耐久性を身体の部位に応じて最適な生地を配置し、
それが立体パズルの様に組み立てられているので、自然と乗車姿勢が取りやすくなります。

近年のハイエンドモデルのトレンドは、タイトフィットに着用して、
汗を素早く吸収・発散しつつ、風を受けてもバタつかないというものになっています。
敢えて1~2サイズ小さめを選ぶというライダーも珍しくありません。

例を挙げると全日本モトクロスIA-1クラスで走る大倉 由揮選手は身長172cmですが、Sサイズを着用しています。
体重も68kgなので、極端に細身というわけではなく、程よく締まったアスリートの体系ですが、
ピチッと着用していてとてもカッコ良いですね。

こちらはFOX・FLEXAIRジャージの商品画像ですが、身体のラインがピタピタに出ています。
胸筋や腹筋のデコボコすら見えるタイトフィットです。
お腹の出たオッチャンには中々挑戦的かもしれません。

これだけピタっと着用するからには、身体の動きを阻害しないよう
縫製の細かさと生地の高いストレッチ性が求められます。
故に、FOXのFLEXAIRやDFGのWORXなどのハイエンドモデルはこのような作りになっているわけですね。


一方のSOLIDウェアはもう少しシンプルな作りで、
WORXウェアに比べると通気性やストレッチ性に差が出ます。
とは言え、こちらはハイエンドモデルのようにタイトに着用するわけではないので、
突っ張って動きにくいということはありません。

ただ、両方試してみると、WORXウェアのようなハイエンドモデルって快適だなぁ・・・と実感しますね。


パンツの比較はよりわかりやすいかもしれません。
上の画像がWORXで、下の画像がSOLIDです。見た目にもWORXの方が細身で薄手、
かつ良く伸びそうな生地に見えますよね(?)
SOLIDは前述の通り、パリっとした質感です。
ただ、関節部には伸縮性の異なる生地を配置して、動きの邪魔にならないように配慮されているのがわかりますね。

まとめ

そんなわけでDFGから近日発売予定のWORXウェアの解説と
モトクロスウェアにおけるハイエンドモデルとスタンダードモデルの違いを解説しました。
冒頭でも書きましたが、この違いがライダーのパフォーマンスを大幅に向上されるわけではありません。
安全性に差があるわけでもありません。

ただ、全日本を戦うトップライダーや明日のIA・IBライダーを目指す「勝ちに行くライダー」は僅かでも走りが良くなるなら
最善を尽くしたいという思いがあります。それが10%も変われば万々歳で、5%でも喉から手が出るくらい欲しいのです。
何故なら拮抗した実力のライダー達と戦うので、「あと一歩」「あと少し」の違いが勝敗を分けるから。

そのお手伝いをするのが今回のWORXウェアや、FOXで言えばFLEXAIRなどのハイエンドモデルということですね。

あとは、ミーハーなマインドで言えばトップライダー達と同じ格好をしたいよね、という要素も大いにあります。
これって大事なんですよ。「良いモノ」を身に着けているというだけでテンション上がりますから、これがタイムに影響することだって
十分あり得るのです。
高級な時計を着けたり良いスーツを着ると仕事のパフォーマンスが上がった気がするのと同じです・・・?


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