This is 丁度良いヘルメット


DFGからヘルメットが出ました

 


DFG=ダートフリークギアブランドからヘルメットが出ました。
その名もACEヘルメット。エースです。そのうち上位モデルでキングヘルメットとか出すんでしょうか。
この記事では昨今のヘルメット業界のトレンドや余談も含めてDFGヘルメットのレビューをしていきます。

どんなヘルメットなの

簡単に言えばThis is 丁度良いヘルメットです。
先行して発売しているDFGのブーツやモトクロスウェアがそうですが、
低価格でオフロード入門~中級者に必要十分な機能を持たせたものになっています。
そして、今回のヘルメットも同じ立ち位置です。

ソリッドカラーで定価が税込み19,800円ですから、間違いなく価格は安いと言えます。
そして必要十分な機能は持っています。

では必要十分な機能とかヘルメットに求められるモノってなんだろう?
ちょっとリストアップしてみましょう。

①安全性
言うまでもなくこれが一番大切です。
ただ、一口に安全性と言ってもアプローチの仕方が沢山あります。(後述します)

②通気性
沢山の汗を掻くのがオフロードライド。
しっかり風を取り入れて、後方へ抜く通路が確保されていること。

③被り心地
オンロードに比べ海外メーカーのシェアが多いオフロードヘルメット。
海外のヘルメットは欧米の頭部形状をターゲットに設計されているため
日本人のそれとは異なります。
故に、まず普通に被れるであろうARAIやSHOEIと比べて、
実際に被ってみないとヘルメットとの相性がわからないというギャンブル性があります。

④軽さ
重いヘルメットはそのまま首の負担に。
首の負担は肩こりの原因にもなります。安全性を担保しつつ、可能な限り軽い方が良いですね。

⑤付加価値
インカムや眼鏡は装着出来るか・シールドやインナーバイザーは付いているか・などの付加価値。
今回のACEヘルメットは純オフロードヘルメットとして設計されているのでシールドの類は付いていません。

⑥価格
本当は気にしたくないけど気にせざるを得ないのが価格です。
BELLのMOTO-10などカーボン仕様のハイエンドモデルなどは10万円を超えてくる時代です。
SHOEIのVFX-WRなどもグラフィックモデルは7万円以上と、この10年程で価格は随分上がりました。

こんなところでしょうか。
多くの方がヘルメットを選ぶ際に選ぶポイントはおおよそこの6つに絞られると思います。
そして、このACEヘルメットはこのポイントを無難に抑えていますよ、
というところで入門~中級者の方へオススメしやすいヘルメットに仕上がっています。
それではこの6つの要素を深掘りしていきましょう。

①安全性

まずは安全性でしょう。その為にヘルメットを被っているのです。
そして、このヘルメットがバランスを一番考慮したのもここです。
後述する軽さと密接に関わってくる部分でもあるので。

帽体


まず、このヘルメットは帽体(ガワのボディ)がプラスチックで出来ています。
詳細に言えばポリカーボネートとABSのハイブリッドですね。
SHOEIやARAIのヘルメットはFRP製ですが、ここは価格を抑えるためにプラスチックを選択しています。
FRPの場合は手作業の割合が増えるのでどうしても高価になりがちなのです。

勿論、ただ価格を抑えるだけではダメなので、安全性を担保出来る強度を確保する必要があります。
素材の配合、各部の厚みを調整してしっかりとした強度・剛性を持ったものになっています。

近年のヘルメットは軽さを重視するために帽体の肉厚をかなり薄くしたものが多くあります。
被り口に少し力を加えると結構しなるレベルのものですね。
その分衝撃吸収のライナー(発泡スチロール)を厚くしてクラッシャブルな方向を狙っているのですが、
ちょっと攻め過ぎかなと思うものもあります。

このあたりのバランスは各メーカーの考え方が分かれるところですね。

ライナー・衝撃軽減ギミック


こちらは通常の発泡スチロール製ライナーに加え、ERTという衝撃を逃がすための技術を使ったギミックを備えています。
ライナーというのは大きな衝撃を受けた際に、潰れることで衝撃を吸収するものです。
乗車用ならどのヘルメットにも必須のものですね。



ACEヘルメットではそれに加え、弱い衝撃を逃がすためのERTという特殊素材のマットを仕込みました。
一見お尻の痛くならないゲルマットのように見えますが、実際似た構造です。
このERTは単体では柔らかい素材なのですが、ハニカム形状で通気性と軽さを持ち、
頭部へ掛かる衝撃を吸収して別方向へいなす効果を持っています。
理屈で言えば一見mipsと近いものにも聞こえますが、mipsは回転方向の衝撃をいなす効果に限定しているのに対し
ERTマットは衝撃を吸収といなす両面の機能を持っています。


文字に書き出すと良くできたギミックだと思いますし、
実験でもしっかり効果が出ているようですが、
実際に頭をぶつけてテスト・・・というわけにはいきません。(全てのヘルメットがそうなのですが)
転倒時にこのギミックがしっかり頭を守ってくれると期待しています。

②通気性


これは見ての通り、ベンチレーションのダクトはかなり攻めた形状で
大胆に開講されており通気性は抜群です。

チンガード(顎)横が特に目立ちますが、額や後頭部のダクトも十分な大きさです。
ダクトに向かってエアーを吹き付けてみると図のような流路で風が流れていくのを実感できました。

純オフロード用ヘルメットなのでダクトを開け閉めするシャッターなどは
あえてオミットしています。
最近はSHOEIのVFX-WRをはじめ、
シャッター機能を廃してベンチレーション全開のヘルメットが多いですね。

③被り心地

大事なポイントですが、個人の頭の形で評価が分かれる難しいところです。
ただ、海外ブランドのヘルメットと異なり、日本人の頭部形状に合わせた設計になっているので
概ねどの方にもイイ感じにフィットすると思います。

良く言われる話ですが、欧米人の頭部形状というのは上から見ると前後に長い形をしています。
一方日本人の頭部形状はまんまるに近い形をしています。(横長とも言われますがそれは言いすぎ)
ACEヘルメットは当然日本型に合わせたまんまる内装なので、しっかりジャパンフィットしています。



内装の質感・肌触りは良い意味で価格とのギャップがあります。
サラっとした蒸れにくく、中々上質な感触のあるものになっています。

④軽さ

①の安全性と切っても切れない関係あるのが軽さです。
当然ながら軽ければ軽いほど身体への負担は減るので良いとされます。

しかし、軽さを優先するあまり帽体強度を落としてしまうと
安全性が損なわれてしまうので、バランスの良い落としどころを探ります。
結果、以下の重量に落ち着きました。

 XS/S/M : 1350g (±50g)・L/XL : 1500g (±50g)

ACEヘルメットは帽体サイズが2種あり、そこにサイズ違いの内装を組み合わせることで
XS~XLの5サイズをラインナップしています。
なので、XS-Mはほぼ同じ重量で1350g前後。LとXLもほとんど同じ重量で1500g前後となります。

これはまぁまぁ軽い重量と言えるでしょう。
以前当店で測定した実測値で言うと、SHOEIのVFX-WRがMサイズで1420g。
ARAIのV-CROSS4がMサイズで1550gでした。

つまりACEヘルメットは国内2メーカーよりちょっと軽い程度の重さと言えそうです。
やったね!ACEヘルメットやるじゃん、と言いたいところですが、
序盤でも書いたように、軽さと帽体強度は密接な関係にあり簡単に優劣を決めづらいのです。

SNELL規格


ここで少し掘り下げておくと、ヘルメットの安全規格にSNELLという規格があります。
(画像はSNELL財団発足のきっかけとなったスネルさん)

これはヘルメットの頑丈さを重視した規格であり、帽体の強度が非常に重要なウェイトを持ちます。
ARAIはこの規格を通すことを必須としているため、飛びぬけて軽いモデルというのは苦手です。

同様に、BELLでもその傾向がありフラッグシップモデルのMOTO-10は
実はBELLのオフロードヘルメットの中で最も重量のあるモデルだったりします。
(実はエントリーモデルのMX-9が一番軽量。ただSNELL対応では無い)

こうした理由から、ARAIもBELLのハイエンドモデルも帽体強度は非常に高くなっています。
日本には日本のJIS規格という安全規格がありますが、
SNELLの方が厳しい上位規格として扱われることが多い印象ですね。

一方で、ヨーロッパの規格=ECER22/05規格では
帽体強度よりもクラッシャブルな衝撃を吸収しやすい性質を重視しています。
つまり、帽体を薄く出来るのです。
AIROHやSUMOMYなどのヘルメットが非常に軽くできているのはこれが理由ですね。

そんなわけで、日本&アメリカとヨーロッパでは考え方が大きく違うと言えます。

長くなりましたが話をDFGに戻しますと、ACEヘルメットはアメリカ=SNELL系の考え方と
ヨーロッパ=ECER系の考え方の中間を取った、ということです。何事もバランスですね。

⑤付加価値

これは正直地味かもしれません。
インナーバイザーもシールドもありません。

ただ、純オフロードヘルメットとして軽く作りたかったこともあり、
重くなりそうなギミックは避けたという理由があります。

インカムは対応してますよ


ただ、スピーカーホールは用意されているので
インカムの装着はしやすく配慮されています。

メガネも対応してますよ


良くご質問頂くメガネ対応の可否ですが、ちゃんと対応しています。
国内メーカーは概ね対応しているのですが、輸入ヘルメットではメガネがかけ辛いことが多いのです。
DFGではメガネの社員が開発に携わっているのでその点安心です。
そう、画像の彼です。眉毛のお手入れもバッチリですね。

⑥価格

最後に価格です。単色のソリッドカラーで19,800円。
グラフィックモデルで22,000円。
これは低価格と言って良いでしょう。ダートフリークさん結構頑張りました。

昨今の円安の影響も相まって輸入ヘルメットの価格はエントリーモデルと言えどかなり上がっています。
国内メーカーのヘルメットはハイエンドモデルが基本ですし、
やはり原材料や人件費高騰のため価格はそれなりにします。

①~④の項で解説した通り、
安全性や機能を妥協せず作られているのは確かなので、
低価格と言えどしっかりしたヘルメットに仕上がっています。

オフロードデビューセット

このヘルメットの登場により、DFGブランドで
オフロードギアが概ね揃ったことになります。
ざっくりヘルメットが2万円として、ゴーグルは5千円。
ジャージ&パンツ&グローブで同じく2.5万円。
ブーツが2.8万円、エルボー&ニーシンガードで8千円。

ここまでで8.6万円です。
胸部プロテクターは現在DFGのラインナップにありませんが、1.5-2万円程で買えますし、
インナーウェアなどを足しても10万円そこそこで一式揃います。

オフロードデビューの敷居を下げたいな、というコンセプトから始まったDFGのウェアやブーツ展開ですが、
ヘルメットの登場で概ねその目的は達成できたかと思います。
今後、ハイエンドモデルの登場も控えていますが、色々な方に気軽に
オフロードを楽しんで貰いたいという思いはブレずにアレコレ展開していきたいと思います。
・・・って僕は開発の立場ではないのですが、皆そんな思いです!

まとめ

以上、6つのポイントからDFG・ACEヘルメットをご紹介とレビューをしてみました。
ヘルメットに求められる様々な要素をバランスよくまとめ、しっかりジャパンフィットしていて
被り心地も良い感じということで、オフロードデビューするなら
まずはコレを選んでおけば間違いないと言えるモノになっています。

ツーリングでも、林道でもエンデューロでも、
このヘルメットが対応出来ないフィールドはありません。
まずはココから始めてみてはいかがでしょうか~


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