
競技用というロマン
「モトクロッサーみたいな軽くて速いバイクを公道で乗れたらいいな」

【CRF250R】【YZ250F】こうしたキーワードで検索すると
大抵予測キーワードに【公道仕様】とセットで出てきます。
皆さん競技用車両(以下レーサーと呼びます)を公道で乗れたら・・・と考えているわけですね。
圧倒的なパワーと鋭いレスポンスに軽い車体。
一見すると公道仕様として販売されているCRF250LやWR125Rの
上位互換の様にも見えるスペックですが、
公道走行においては良いことばかりではありません。
この記事では、競技用車両とは何かという基礎知識から、
トレールバイクとの設計思想の決定的な違い、
ロマンと現実を比較して検討してみたいと思います。
競技用車両=レーサーとは
トライアルバイクを除き、レーサーと呼ばれるバイクは大きく2種類に分けられます。
① モトクロッサー(純競技用車両)

オフロードコースという公道から隔離された専用のフィールドで走る為の文字通り競技用の車両です。
●ホンダ:CRF250R/450R ヤマハ:YZ250F/450F等
●保安部品は一切ありません。
●販売証明などの書類も発行されないため、ナンバーの取得も出来ません。
② エンデューロレーサー(ナンバー取得出来たりする)

公道区間(リエゾン)を含むエンデューロ競技に対応するために設計された車両です。
日本で一般的に言われるエンデューロという言葉は耐久モトクロスのような意味合いで使われる
ケースが多い傾向にありますが、こちらは正確にはクロスカントリーレースと呼ばれます。
ここで言うエンデューロはHTDEなどに代表される公道を使用したオンタイムエンデューロなどを指します。
●ヤマハ:WR250F KTM 250 EXC-F等
●一応の保安部品を装備しており、ナンバーを取得出来る場合があります。
場合がありますという曖昧な表現である理由は、
WRのような逆輸入車の場合、登録という行為が販売店次第であるという理由です。
法律的には保安基準を満たした灯火類を装備して
正規の手続きでナンバーを取得しているのであれば問題ありません。
自賠責も任意保険もちゃんと入れます。
しかし、WR250Fを例に挙げると、車両自体は日本製であるものの
国内販売を想定したモデルでは無いため
日本のヤマハ(ヤマハ発動機販売)は関知しませんし、登録を推奨もしていません。
ホンダの場合はもっと厳しく、20年程前ですが過去には
CRF250X/450Xを登録するショップは取引停止にする
という告知を出したケースもありました。
(理由は後述)
当然、メーカー保証もありません。
海外メーカーはその限りではない


Betamotor japan様公式の画面キャプチャ
一方、海外メーカーの場合は登録に制限を掛けていることはあまりありません。
KTMやBETAディーラーで普通にEXC-Fや
RR250を公道仕様として購入することは普通に可能です。
(2サイクル300ccなど一部例外あり)
「公道を走れる」と「公道向き」は違う
ここが最も重要なポイントです。レーサーにとっての公道走行は、
あくまで「次のセクションへ移動するための区間」に過ぎません。

一方、CRF250LやWR125Rのようなトレールバイクは
「自宅から林道やコースまで自走で走り、帰る」
ことを目的に設計されています。
もちろん用途はオフロードだけではありません。
高速道路を延々と巡航する場合もあるでしょうし、通勤通学にも使用されるでしょう。
それでいて長期間壊れない耐久性が求められます。
この「設計思想の差」により、
トレールバイクとレーサーでは同じ公道仕様という括りがあっても
実態は全くの別物になります。
レーサーで公道走行はなにかとしんどい
① ギアが極端にローギアード
モトクロッサーやエンデューロレーサーは高速巡航を主体とはしていないため、
スプロケットによる二次減速比とミッションによる一次減速比、どちらも加速寄りのものになっています。

スプロケットの歯数で言えば、CRF250Lがフロント14とリヤ40に対し
CRF250Rはフロント13とリヤ48となっています。
ミッションにおいても、CRF250Lはワイドレシオとして1速・2速・3速と
各ギヤの比率が離れた設定になっていますが、CRF250Rの場合、各ギヤの比率が近い設定になっています。
これをクロスミッションと呼び、オフロードにおいては有効ですが
公道走行ではギアチェンジがなにかと忙しいものになってしまいます。
② メンテナンスサイクルが早い
トレールバイクのメンテナンスが「3000km〜5000km走行ごとにオイル交換」などという距離単位なのに対し、
競技用車両はエンジンの稼働時間で管理します。
(ざっくり○回乗ったらエンジンを開けるという管理の仕方もありますけどね)
例えば2サイクルなら30時間・4サイクルなら50時間も走れば
ピストン交換をしておきたいところですが(これでもマニュアルより遅い)
距離にするとこれはどのくらいでしょうか。
2000km・・・4000kmもいかないと思います。
トレールバイクだとすると、2000km-4000kmでピストン交換なんて考えられないですよね。
高出力・高回転型のエンジン故にほったらかしで長距離を走れる設計ではありません。
適切なサイクルでオイル交換・部品交換が必要になります。
昔のCRF-Rは構造上、良くエンジンオイルが減っていたので
(2サイクルじゃないのに)
オイルの補充ないし交換がシビアなものでした。
レーサーはこうしたメンテナンスサイクルの短さ故に、
公道仕様だとあっと言う間に消耗して
大がかりなメンテナンスを要するということになります。

注:画像はクロスカントリーレース向けに国内販売された2010年型です
ホンダがCRF250X・450Xの登録販売に強めの警告を出した理由がコレです。
トレールバイクの感覚のまま公道で使用してしまうと
早期にエンジントラブルを引き起こす可能性があり、
いくらホンダが国内で正規に販売していない・推奨していないとは言え
ホンダが製造しているのは事実なので、
完全にノータッチとはいかずトラブルの種になる(なった)からです。
ホンダの視点で考えれば、
勝手に輸入して登録して壊れて苦情を言われても困ると言ったところでしょう。
XRの時代は設計がトレールバイクと共通の部分が多く
ギヤ比や発電量の問題など多少の乗りにくさはあれど
公道で使用したとしておかしな壊れ方はそうそう無かったので
比較的メーカーも寛容でした。
しかし、CRFの時代になるとそうもいかなくなったわけですね。
③電装系が貧弱
レーサーは走行風を浴びて冷やすことが前提であり、
モトクロッサーは勿論、エンデューロモデルでも電動ファンが付いていない場合があります。
市街地の信号待ちや渋滞にハマると、オーバーヒートの可能性があります。
ファンが付いていればOKですが、付いていないなら装着しておきたいところ。
しかし、レーサーは発電量も最小限なので
保安部品に追加で電動ファンを付けるとそれだけでギリギリという場合もあります。

USB充電やグリップヒーターなどの便利装備は消費電力が
発電量を上回ってしまう=バッテリー上がりのリスクがあるのでオススメ出来ません。
やっかいなのが、微妙に発電量が足りていないケースです。
バッテリーがあるのでとりあえずは稼働するのですが、
消費の方が上回っているので徐々にバッテリー残量が減っていき
ある程度時間が経った後にバッテリー上がりに陥るという事態になります。
こうした事態を避けるためにも、
電装部品の増設には慎重になる必要がありますね。
④ シート高900mmオーバーの足つき性
サスペンションストローク確保と地上高確保のため、
CRF250R/RXを例に挙げるとシート高は950〜960mmに。
CRF250L/Sは830-880mmなので、100mm近く違うということに。
足付きが良い・・・とは言えませんね。
身長が180cmあっても相当なモデル体型の方で無いと
両足ベッタリとはならないでしょう。

ローダウンという方法もありますが、
流石に100mmダウンというのは難しく、
サスペンション本体で50mm・ローダウンリンクで20mm程度下げる形で
合わせて70mmくらいが限度でしょうか。
それでも「競技用車両」に乗りたいなら
ロマンはある
ここまで色々とデメリットを並べ立てましたが、
それでもレーサーをナンバー登録して乗りたいという方は
いらっしゃると思います。

トレールバイクを車に例えるとスポーツカーとするならば
レーサーはF1マシン。
F1マシンが公道でマトモに乗れる代物では無いとしても
憧れる気持ちは・・・わかります。それがロマンなんでしょう。
お金は掛かる

繰り返しになりますが、ノーメンテで長く乗れるバイクではありません。
エンジンは勿論、サスペンションを含め短いサイクルでのメンテナンスが必要です。
自分で整備できる方なら部品代で済みますが、
ショップにお任せの場合は工賃も必要になるので維持費は安くないでしょう。
メーカーには頼らない(国内メーカーに限り)
こちらも繰り替えしの話になりますが、
国内メーカーはレーサーの登録を良しとしていません。
それを登録するということは、
メーカーのサポートは一切受けられないということを意味します。
個人売買ならなおさらなので、
信頼できるショップ様を見つけておきましょう。
外車であればある程度OK

KTM・BETAなどの外車メーカーの外車・かつ登録可能として
販売されているモデルであれば
メーカー・ショップのサポートは問題ありません。
ただ、やはりロングツーリングを想定しているわけではないので
用途は間違えるとトラブルになりやすいのは国内メーカーと同様です。
まとめ
手放しでオススメはできない
というわけで、記事の大半がレーサーで公道を走ることの
リスクの説明のような記事になってしまいましたが、
実際手放しでハイスペックだからとオススメ出来るものでは無いというのは事実です。
国内メーカーはショップ様だけが頼りですし、
外車メーカーはある程度サポートが充実していますが
ロングツーリングで乗りやすい・疲れにくいバイクでは無いのでその点は
留意する必要があります。
登録・保安基準は必ず守る
そしてなによりしっかりと法規に乗っ取った仕様であることは必須です。
マフラー音量が基準値以上とか、保安部品がダミーだとか、そういった仕様は論外です。
10年ほど前でしょうか。
450のバイクを250として登録・その後事故で亡くなられた方がいらっしゃいました。
大変痛ましい事故でしたが、事故に遭って初めて登録がおかしいことが発覚したのです。
ご心痛の中でご遺族が更に苦労されたのは想像に難くありません。
法規は必ず守りましょう。
それでもレーサーに乗りたいなら
それでも・・・それでもレーサーに乗りたいということであれば
苦労も含めて受け入れられるかもしれません。
やはり個人的にはサポート体制のある外車メーカーをオススメします。




