第3回となる今回は、ホイールの組み立て作業を行います。
リム組みってやつですね!皆さん苦手意識がある作業だと思います。
でもね、やってみるとそれほど難しい作業ではありません。
理屈さえわかれば地味な作業をちょこちょこ繰り返していけば、いずれ完成するのがこの作業です。
ホイールを組み立てましょう
材料がコチラです。
中心となるハブ、スポーク、リム、それらを固定するニップル。
ご覧の通り純正ホイールのパーツは全く使用していません。
完全にホイールは入れ替えとなります。
使用する工具
作業に必要な工具を並べた様子がコチラ。
振れ取り台ことDRCジャイロスタンド、ドライバー、ニップルレンチ、ニップルトルクレンチ、L型定規など。
今回は更にダイヤルゲージなども使用していますが、個人のレベルでは必要ありません。
作業開始
それでは組み立て作業に入りましょう
と言いたいところですが、スポークをハブに挿す前に
ネジ山にスレッドコンパウンド(銅グリス)を塗布しておきます。
こうすることで、固着しやすいアルミニップルでもメンテナンスが容易になります。
下準備はOK
下準備が出来たらようやく組み立てしていきます。
リムの回転方向をハブと合わせ、スポークを挿していくわけですが、
スポークにはIN(内側)とOUT(外側)があるので、間違えないように
ハブの穴に挿していきます。まずはIN側を全部挿し、次にOUT側を挿すような形で進めると間違えにくいでしょう。
スプロケット側が挿し終わり、ニップルで固定しました。
リムの穴にもハブに合わせて向きが設定されているので、間違えて違う穴に通さないように注意。
反対側も同じように挿してニップルで固定していきます。
これで、見かけ上はホイールの形になりました。
しかし、まだスポークは緩くガタガタでバランスどころでは無いので、
ある程度ニップルを締めてガタの無い状態まで持っていきましょう。
振れ取り台にセット
振れ取り台であるジャイロスタンドにホイールをセットしたら、
ニップルを電動ドライバーで大まかに締めていきます。目安はネジ山が隠れる程度に。
(ホイールによっては、完成状態でもネジ山が露出するので本当に目安です)
スポークを掴んでもカタカタ音がしない程度に締めれればOK。
振れ取りに必要なオフセット量とは
ここから本格的に振れを取っていきたいところですが、
その際に必要になる情報=オフセット量があります。
オフセット量と言うのは、ハブに対してのリムの位置のこと。
ネジの締め具合でリムの位置は左右に大きく動くのですが、どの位置にリムを設定すれば良いのか?
これがオフセット量なのです。
ハブに対してのセンターであったり、意図的に左右にズラしてあったり、
メーカー・車種によってここはまちまちなので、分解前にオフセット量を記録しておくことが大切です。
これを記録せずに分解してしまうと、リム位置をどこに設定すれば良いのか二度とわからなくなってしまいます・・・
オフセットの測定方法は、ブレーキディスク取り付け面から
リムの端面までの距離を測定します。
エンデューロ仕様などでリム幅を変更したりする場合には、
純正のオフセット量を基準に計算して設定するわけですね。
振れの取りかた
今回はオフセット量39mmの設定なので、振れ取り台のゲージもその数値に合わせます。
横振れを取る場合には、常に39mmのラインにリムの端面が来るように調整し、
縦振れを取る場合には、上下の振れが無いようにゲージスレスレをリムの端面が通るようにすればOK。
横振れを取る際の理屈としては、右側から生えているスポークを締めればリムは右に寄り、
左側から生えるスポークを締めれば左に寄ります。
つまり、ゲージに遠い箇所は右側を締め、ゲージに近い場所は左側を締めるということ。
ただ、締めるばかりですと途中でトルク的な限界が来てしまうので、
カチカチで締めきれない場合には反対側のスポークを緩めることでも同様の効果が得られます。
要は綱引きの理屈ですね。
縦振れに関しても同様で、ゲージに近い部分はその部分のスポークを締めこむとゲージから離れ、
ゲージから遠い部分はスポークを緩めることでゲージに近づきます。
横振れに比べ、スポークを締めているばかりでは中々縦振れは取れないので、
締めと緩めを並行して作業すると良いでしょう。
ただ、リムの溶接跡がある部分に関してはリムが真円になっていない(溶接の歪みが出ている)ため、
溶接跡の部分に関してはある程度のポイントで妥協が必要です。
通常はここまででOKですが
通常はこの作業の繰り返しで必要十分な精度は出せるはずです。
しかし、ダートフリークの職人DF-CRAFTでは、更に高い精度で組み立てしています。
サービスマニュアルで指定されている、リムの振れの許容範囲はおおよそ2mm以内。
これを、DF-CRAFTでは1/4の0.5mm以内まで調整します。
1mmを切る精度を出すには、肉眼で目視するには限界があります。
職人もそろそろ老眼が出てきてしんどくなってきたので、ここはダイヤルゲージを縦・横にセットして
ゲージを見ながら調整していきます。
ダイヤルゲージはコンマミリ単位のわずかな変化でも大きく針の動きで確認出来るため、
肉眼よりもより高精度で振れ取りが可能になります。
ただ、ある程度の経験値が無いとこんがらがって無間地獄に堕ちるので、
一般の方はここまで攻める必要は無いかな・・・
最後はトルクレンチ
最後にトルクレンチで規定トルクを確認して仕上げます。
今回のホイールでは3.7Nmのトルクとなっていますが、一般的にはしっかり締まっていればOK。
ナメるほどカチカチでもなく、ガタガタでも無いという範囲を狙って下さい。
完成
と、言うわけでダイヤルゲージを使用して0.4mm程度の振れまで抑えこみ、
トルクレンチで規定トルクも掛かっているということで、無事完成となります。
ま、他にもスプロケットやディスクを取り付けたり
タイヤの装着というメニューがあるのですが、メインのホイール組み立てとしてはこのような作業となっております。
振れ取り台とニップルレンチさえあれば、他に特殊な工具はそう必要ありません。
繰り返しにはなりますが、個人レベルの作業レベルであれば
ダイヤルゲージやトルクレンチまで使わなくとも十分な仕上がりは達成可能です。
皆さんも一度挑戦してはいかがでしょうか。やってみると中々楽しいものですよ。
レストアでも、リム交換でも覚えておいて損は無い技術です。
それではまた次回もお楽しみに~