2025 YZ250FX

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ヤマハさんより新型・2025年式のYZ250FXの試乗会にお誘い頂き、
車両も一足早くお借りすることが出来ました。
先日のJNCCでも走っていて、大変評判の良いこのバイク。
どのようなバイクなのか、なにが変わったのかなど、簡単にご説明していきたいと思います。

 

YZ250FXとは

まず、YZ250FXというバイクは
モトクロッサー・YZ250Fのクロスカントリーエンデューロバージョンと言えるバイクです。
末尾のXはCROSS-COUNTRYから来てるのかな?

クロスカントリーエンデューロというのは、ズバリ日本で言えばJNCCやWEXのような
90分~3時間程度の時間でクローズドコースを周回するタイプのレースです。
故に、WR-Fシリーズのようにヘッドライトなどは付いていませんし、
排ガス・音量規制の影響も最小限です。
つまりはフルパワーでエンデューロを楽しむシリーズがYZのXシリーズです。

2015年からラインナップされたYZ250FXは、2025年モデルで2回目のフルモデルチェンジを果たしました。
2020年で二世代目、そして2025年で三世代目となり、大きく進化しています。

メディア向けに開催された試乗会では、YZ-FXとYZ-Xといったエンデューロモデルがズラリと並べられ、
各社テスト走行や撮影を行っていました。

外観

 

まずは外観から見ると、継ぎ接ぎ感の無い・繋がりのある外装デザインになっています。
オシャレに言えばシームレスなデザイン。

思えば初期型(2014-2019)はシュラウドのリベットやサブフレームが大きく露出していて
プロトタイプのようなデザインでした。
まだ250は後方排気になって一世代目。450を含めても二世代目なので
設計とデザインの苦心が垣間見えるような印象があります。


シートからタンクに掛けてのラインの繋がりも凹凸の無い形状で、
ライダーの体重移動がスムーズに行えます。
ライテクのお話で、コーナーリングの際に「タンクの上に座るつもりで前に座るべし」と言いますが
このバイクなら本当にタンクの上に座ることも可能です。

フロントゼッケンプレートはホースガイドの無いデザインで、
ワイヤー・ホース類は全てゼッケン裏に収められます。
ライダー視点で覗いてみると、ワイヤーはこっち・ホースはこっちとガイドが付いているので
整備の際に迷う心配も無さそうですね。

ラジエター~シュラウドの全幅は従来型より
左右で50mm狭くなっているそうです。確かにかなりスリム。
跨った感じでは空冷シュラウドのXRくらいのスリムさです。
ラジエターガードを装着するとどうしてもここは広がってしまいますが
元からここまでスリムなら、ガードを付けてもあまり気にならないかもしれませんね。

FXとしてのチューニング

一口にエンデューロ仕様とは言いますが、具体的にどこが変わっているのでしょうか。
モトクロッサー→エンデューロ仕様にするにあたって、
一般的に各社が変更するのは以下のようなポイントです。

タンク容量をアップ
リヤホイール径を19→18インチへ
電動ファン・ラジエターリザーブタンクの装着
サスペンションをソフトに
エンジン特性をマイルドに

ミッションを5速→6速へ
サイドスタンドの装着

ヤマハ以外の車両も含め、大体この辺りの変更が基本ですね。
YZ250FXに上記のポイントを当てはめるとこんな感じです↓

タンク容量をアップ(6.2L→7.8L)
リヤホイール径を19→18インチへ(従来型と互換性無し)
電動ファンの装着
サスペンションをソフトに(-10mmローダウン仕様)
エンジン特性をマイルドに

ミッションを5速→6速へ
サイドスタンドの装着

その他、エンジンハンガーを変更して剛性の調整を行ったり
細部の最適化がされています。

エンジンハンガー


エンジンハンガーは面白いところで、エンデューロ仕様と言うと
剛性を落とすのかと思いきや、逆に強くする方向で調整されることもあります。
ギミックの無い板と侮るなかれ大きな効果があるんですね。

試しに比較してみましょう。
こちらは2024年式のYZ250Fのフレーム前方に位置するエンジンハンガー。
厚みは実測でおよそ8.5mmです。

こちらはYZ250FXのエンジンハンガー。
8mmと5mmのプレートを重ねて13mmの厚みになっています。

当然厚みがあった方が剛性は高いはずなので、
一見FXは剛性は高める方向でチューニングされていると思いきや、
分割構造なのでしなやかになるというメーカーのコメント。
奥が深いですねぇ。


展示されていたエンジンハンガー単体での比較。
こうして見るとわかりやすいですね。

電動ファンの装着


電動ファンは仕向地などで付いていたり、付いていなかったりまちまちですが、
国内仕様のYZ250FXは電動ファンが装着されています。

 

18インチ化

リヤホイールに関しては、これまでYZ125や250などの2サイクルシリーズと
共通のものが使用されてきました。
設計としてはアクスル径の細いもので、
エンデューロには柔軟性のあるこちらが丁度良いとされて
採用されてきたのですが、今回のモデルチェンジで
YZ250F・450Fなどの4サイクルシリーズに合わせた形となりました。
(スペアホイールを用意する際はこの点に注意が必要ですね)

アクスル系が変わった理由としては、リムを新設計としてスポークの組み方を変えることで、ホイールの衝撃吸収性が向上したから。
それにより剛性バランスの取り方が変わったとのことです。

ただ、アクスルシャフトそのものはYZ250FとFXでは異なり、
内径がより狭く・肉厚になっているのがFX。これも肉厚な分剛性が高いのかと思いきや
走りの上でしなりを感じるのはFXの方だそうです。不思議・・・

 

ステップブラケット

ステップのホルダーも、左側のみですが地味に変更されています。
こちらはYZ250FではアルミだったものをFXではスチールへ変更。
重くなるのは承知の上で、強度アップを優先したということですね。
ガレ場を走る際にステップホルダーが変形するという話は度々あるので、
これはエンデューロマシンらしい変更点と言えるでしょう。
ただ、左側のみなのは何故なんでしょうか?サイドスタンドのマウントも兼ねてるからかな・・・

前後サスペンション

前後サスペンションは-10mmのショートストローク化でローダウンされているということで
足つきが良くなっています。これは難所で足をつく際に有効ですね。
ストロークと引き換えにはなりますが、近年のエンデューロはどんどんハード志向になっているので
足つき重視ということなのでしょうか。実際デメリットはほぼ感じないと思います。

実際に跨ってみてると実感します。
YZ250F比で-15mmシート高が下がっているとのことで、
ここからパーツ交換で更にローダウンすることも可能です。

また、跨るだけでもセッティングがソフトになっている感触があります。
初期の動きが柔らかいと、ガレ場などが走りやすくなるのはもちろん、
フロントアップなどのアクションもしやすくて良いですね。

 

圧側の減衰力調整は工具無しで調整可能です。
車両はZETAのものに交換済みですが、ノーマルでもツマミ形状になっているのが嬉しいですね。

ハイテク機能

これは2025モデルからの機能ではありませんが、
YZ-F・FXシリーズはアプリ上で燃調のセッティングが可能です。

燃料の濃さ・点火時期の進角・遅角を細かく設定したり、
直観的にスムース~アグレッシブまでを指先一つで調整することも可能です。

その他、トラクションコントロールの介入具合や
ローンチコントロール(スタートダッシュモード)エンジンの稼働時間管理など
さまざまな機能をスマホ上から設定出来ます。

これも初期モデルでは別途大振りなデバイスが必要だったのが
随分便利になりました。
どちらも、FCRキャブレターを触るよりは遥かに簡単なんですけどね・・・
良い時代です。

このセッティングによる特性の変更や、トラクションコントロールの効果について、
実際に試乗したdf社員の水野に話を聞きました。
彼は元国際B旧ライダーで、かつてはJNCCでもAクラスで走っていた経歴の持ち主です。

スムースからアグレッシブの変更は誰でもわかるレベルで実感出来る。
サスペンションはかなりソフトな設定だが、モトクロッサーと遜色の無いパワー特性にも出来るので
テーブルトップを飛びきるようなジャンプも飛べるし、着地でもサスペンションが奥で踏ん張るので
底付きしてガチャーンとなることは無かった。

また、トラクションコントロールの効果は衝撃的で、介入具合を最大にすれば、
雑にアクセルを操作しても空転したりせず、スムーズな走りにしてくれるので
ウッズや滑りやすい路面・ヒルクライムでは非常に高い効果があると思う。
ただ、スムーズ過ぎて攻めたいという際には物足りなさを感じるので、その際は
手元のボタンで介入をキャンセルすれば良い。

トレールバイクのステップアップとして考えた場合、
車高はノーマルの955mmから50mm程度落とすことは比較的簡単に出来る。
それでも905mmなので、セローやCRF250L程低くするのは難しいが、
車重が圧倒的に軽いので、バランスを崩した際の立て直しはしやすかったりする。

また、エンジンのレスポンスやパワーはフルパワーであれば当然強烈なものの、
スムース設定にしたり、点火時期の遅角などでマイルドにすることも出来る。
ただ、極低速のジワッとした粘りだけはセローのようにはいかない。
これも、見方を変えるとトラクションコントロールの介入を最大にしてアクセルを開けていれば
スリッピーな場所でもグリップするので、さほど難しさは感じない。

比較対象として2サイクルのYZ125X・250Xにも試乗したが、こちらは
随分スパルタンに感じた。FXシリーズがふんだんに電子制御が入っている分
パワーバンドを意識したり、鋭いレスレスポンスに対し丁寧なアクセルワークを要求されるからだろう。
本来はこれもモトクロッサーに比べれば扱いやすくチューニングされているはずだが、
FXのインパクトが強く、相対的にモトクロッサーのような感覚を覚えたのかもしれない。

まとめ

他にも細かな変更点は色々とあるかと思いますが、
軽く触ってみて気づいたポイントはこんなところです。
もちろん、乗り出して気づくポイントもあるでしょうから、
まだまだ語り切れていない要素は盛りだくさんです。

以下、メーカーのイチオシ変更点を画像で簡単にご紹介していきます。

エアクリーナーは年々メンテナンスしやすくなっていますね。
後方排気初期モデルである2010-2013モデルのYZ450Fは凄く手間でしたから、
今の交換のしやすさは感動的です。

カムチェーンは幅が広くなっているそうです。
耐久性向上のためと、フリクションも軽減。

エンデューロ向けのブレーキパッドということでしょう。
やや効きがマイルドなのか、それとも強いのか。
軽く試乗した限りではわからないかもしれません。

クラッチはプレートが異なるように見えますね。

ミッションは6速化とワイドレシオ化。
かつてエンデューロと言えばWRでしたが、WRの名前の由来はワイドレシオから来ています。

ブレーキホースまで違うのは言われないと気づけないポイントかもしれません・・・

 

 

 

普段dfシャチョー号である2014年式のYZ250FXを触っている身からすると
二世代分の進化は実に大きなものだと実感します。
2サイクルのような扱いの難しさもありませんし、
水野のインプレッションのように、
トレールバイクからのステップアップでも全然乗れるかと思います。

僕もこの車両を持ち出して遊びに行きたいところです・・・

 

 

 

おわり


寺尾 拓郎

この記事を書いた人

店長

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