ハードスプリングってなんか憧れる
サスペンションは固くすれば良いの?
トレールバイクやCRF125Fのようなファンバイクにはハードスプリングというのが
ラインナップされています。
これは本格オフロード走行においてはハードスプリングがオススメですよということで
開発されたわけですが、じゃあざっくりサスペンションというのは固ければ良いのか
という考えになりそうなものです。
スプリング交換ではフロントフォークを一部分解したりするので、
ついでにフォークオイルも固めのものに変えちゃおうかな、とかリヤサスペンションにはハイリフトリンクを入れてみようかな、
とあれこれやってみたくなりますよね。
こうしたサスへのアプローチは良いことも多いですが、
全てのライダーに最適というわけでは無いので、
パーツの特性を良く理解して、自分の体重や乗り方・走るフィールドを考えて選ぶ必要があります。
具体例1:SEROW250
例えばセローを例に挙げてみましょう。
ダープラにはセローのサスペンションに関わるパーツが色々と揃っていますが、
やはり目を引くのは前後スプリング。
どちらも純正に比べてハードに設定されています。
元々の純正スプリングが比較的ソフトということもあり開発されたのですが、
セローというバイクはターゲットが非常に広いバイクなので、
オーナーさんの中には体重40kgの方もいれば90kgの方もいるでしょう。
また、トレッキング志向の方もいれば高速巡行が多い方、エンデューロで攻める方と色々です。
仮に、体重40kgの方がトレッキングに使用するなら、ハードスプリングである必要は無いかな、
とも思います。
体重を考えれば柔らかすぎるとも言えませんし、柔らかい方がフロントアップなどのきっかけ作りがしやすかったりしますしね。
では、体重90kgの方が高速道路を多用したオンロードツーリングに使用する場合はどうでしょう。
この場合はハードスプリングの方が良いでしょう。体重がそこそこあって荷物も積むでしょうし、
高速域において、純正のスプリングのままではフワフワして安定感が少し足りないかなと思います。
3つめの例として、体重60kgの方がJNCCのようなエンデューロに使用するなら?
これもハードスプリングが良いと思います。トレッキングと異なり速度域が高いのと、
ギャップを飛ばして通過する場面などでは固い脚の方が走りやすいでしょう。
まとめると、
体重が軽くて速度域が低ければそのままでも良い。
体重がある、もしくは荷物が多い。もしくは速度域が高ければハードスプリングが活きてくる。
こんな感じですね。
具体例2:WR250R
では、WR250Rの場合はどうかと言いますと、
このバイクは純正で中々に固いスプリングが付いています。
なので、タンデムを想定してスーパーハードなリヤスプリングのみを
ハードに変える場合が多いですね。
リヤに合わせる形でフロントをスーパーハードに変える場合もありますが、
前者に比べると少数派かもしれません。
先日、お客様より
WRでスラムパークを走っているけど底付きが気になるのでハードにした方が良いかな?
というご相談を頂きました。
WRというバイクは前述の通りそこそこ固めのスプリングなので、本来そんなに底付きする場面は無いかと思います。
なので、今回は乗り方で変わってくるかもしれません。
例えばジャンプを飛ぶ場合、着地ではブレーキは触らず、アクセルをちょいと開けるというのが基本です。
簡単な理屈で、物体は落下した際に転がっていけば衝撃が緩和されるというシンプルな話です。
ブレーキを掛けていたらタイヤが転がっていけませんし、
アクセルを開けなさいと言うのもエンジンブレーキを掛けずにバイクを前に進めるためです。
(ジャンプの状況においてはアクセルを開けるのが絶対では無いのですが、基本的にはちょこっと開けておく、という認識で良いかなと思います。)
あとは、着地の仕方も基本的に地面と平行に着地するようにしておけば尚衝撃は和らぎます。
こうした点を試して頂いても尚、底付きが気になるようでしたら、
スプリングに交換を検討しても良いかもしれませんね。
ダンパーによる調整
スプリングというのはサスペンションの絶対的な固さを決める要のパーツです。
後述するオイルやダンパーを変えたとしても、
スプリングの固さを根底からひっくり返すような影響はありません。
ただ、それなりには影響しますし、
スプリング交換と違ってアジャスターを回してのダンパー調整なら
費用も掛からないので、まずはここから試しても良いでしょう。
前提として、ダンパーの強弱(減衰力)もスプリングのように固い・柔らかいと表現されますが、
これはサス内部のオイルが流路を通る際の抵抗の話なので、
正確に言えばサスの動きが遅い(固い)or速い(柔らかい)というのが正確です。
底付きしやすいからと言って闇雲にアジャスターを最強位置にしたり、
粘度の著しく高いオイルを入れると、
動きが遅くなりすぎて細かなギャップに追従してこれないこともあるのでやり過ぎは禁物ですね。
まとめ
そんなわけでサスペンションを固くする前に覚えておきたい基礎知識のお話でした。
モトクロスIAライダーのバイクを触ってみると、大ジャンプを飛んだり猛スピードで走っている割に
案外カチカチのサスではなかったりします。
それは、ジャンプのいなし方だったり衝撃のかわし方が上手だからなんですね。
また、柔らかいサスの方がブレーキングで車体が良く沈むので、コーナーが曲がりやすいなどのメリットもあります。
セッティングの正解は一つではありません。体重や用途による選びかたもあくまで一つの例なので、
色々と試して遊んでみて下さい。